「10年前に、あの株を買っておけば…」。投資をしていると、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の9社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。
今回は、時価総額9位のファーストリテイリング(9983)です。「ユニクロ」「ジーユー(GU)」を持つ、日本で一番大きなアパレルの会社です。
結果は6.91倍。ただ、この会社で驚いたのは倍率よりも別のところでした。配当利回りはずっと1%前後なのに、持ち続けた人の利回りは7%を超えていたのです。
この記事で分かること:
- 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
- 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
- 「利回り1%の株」でも、持ち続けると何が起きるのか
- 新NISAでS&P500を積み立てる僕が、この10年を見て考えたこと
1. 計算の前提
まず、計算のルールです。
- 2016年10月17日の終値で100株を購入
- 配当は再投資せず、受け取るだけ
- 税金・手数料は考えない(税引き前)
- 株式分割は株数に反映
ファーストリテイリングはこの10年で、1株を3株に分ける株式分割を1回行っています。2023年2月28日が基準日で、効力は3月1日です。目的は、株の売買のしやすさ(流動性)を高めることとされています(FASHIONSNAP(2022年12月15日))。
そのため、最初に買った100株は、今は300株になっています。
データはYahoo Financeから取得し、2026年10月14日時点の終値で計算しました。
10年前は、100株買うのに342万円。普通の会社員には、なかなか手が出ない株でした。
2. 結果:100株が6.91倍に
結果はこうなりました。
| 買った日 | 2016年10月17日 |
| 当時の株価 | 34,210円 |
| 投資額(100株) | 3,421,000円 |
| 今の株数 | 300株(1株→3株の分割) |
| 今の株価(2026年10月14日) | 75,840円 |
| 今の評価額 | 22,752,000円 |
| 株の値上がり率 | +565.1% |
| 10年間の配当合計 | 897,000円 |
| 株+配当の合計 | 23,649,000円 |
| トータルリターン | +591.3%(6.91倍) |
342万1,000円が、株と配当を合わせて2,364万9,000円。投資額の約7倍になった計算です。

① 配当が毎年いくら入ったか
配当の流れを年ごとに見てみます。1株配当は、今の300株に合わせた「分割調整後」の金額です。
| 年 | 1株配当(調整後) | 受け取った配当 | 年末の評価額 | 累計配当 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年※ | 0円 | 0円 | 4,183,000円 | 0円 |
| 2017年 | 116.67円 | 35,000円 | 4,491,000円 | 35,000円 |
| 2018年 | 146.67円 | 44,000円 | 5,637,000円 | 79,000円 |
| 2019年 | 160円 | 48,000円 | 6,500,000円 | 127,000円 |
| 2020年 | 160円 | 48,000円 | 9,247,000円 | 175,000円 |
| 2021年 | 160円 | 48,000円 | 6,531,000円 | 223,000円 |
| 2022年 | 206.67円 | 62,000円 | 8,053,000円 | 285,000円 |
| 2023年 | 290円 | 87,000円 | 10,497,000円 | 372,000円 |
| 2024年 | 400円 | 120,000円 | 16,146,000円 | 492,000円 |
| 2025年 | 500円 | 150,000円 | 17,082,000円 | 642,000円 |
| 2026年※ | 850円 | 255,000円 | 22,752,000円 | 897,000円 |
※2016年は10月17日からの約2か月半、2026年は10月14日までのデータで、どちらも1年分ではありません。2026年の「年末の評価額」は10月14日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したものです。ファーストリテイリングは8月決算で、中間配当(2月末基準)と期末配当(8月末基準)がどちらも同じ暦年に入るため、この会社では暦年の合計が決算期の年間配当とほぼ同じになります。2026年の850円は、2026年8月期の中間320円と期末530円の合計です(ファーストリテイリング 2026年8月期 決算サマリー)。
2017年に35,000円だった1年分の配当は、2025年には150,000円になりました。2020〜2021年は横ばいでしたが、2022年からは毎年はっきり増えています。
② 取得額に対する配当利回りは4.38%
直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは4.38%です。342万1,000円に対して、1年で150,000円の配当が入ってくる計算です。
買ったときの利回りは1%ほどでした。それが、増配が続いたことで、僕が高配当株で目安にしている3.5〜4%を超える水準まで上がっています。
③ それでも主役は「株価」
とはいえ、今の評価額22,752,000円に対して、10年の配当合計は897,000円です。6.91倍の大部分は、株価の値上がりによるものです。
途中には大きな下落もありました。
- 2020年末:9,247,000円 → 2021年末:6,531,000円(1年で約3割の下落)
- 2023年末:10,497,000円 → 2024年末:16,146,000円(1年で約1.5倍)
「利回り1%の株」が、10年後には「取得額に対して4%超の株」になっていました。
配当利回りはどうだった?(買ったときと、持ち続けた場合)
「この株を買うかどうか」を考えるには、配当利回りを知ることが欠かせません。買ったときの利回りと、その後の利回りの変化を計算しました。
買ったとき(2016年10月17日)の配当利回りは1.02%です。買う前の1年間に支払われた1株配当116.67円を、買ったときの株価11,403.3円で割った値です(どちらも分割調整後)。分割前の当時の実際の金額でいうと、1株配当350円÷株価34,210円で、同じ利回りになります。
| 時点 | 1株配当 | 株価 | その時点の配当利回り | 持ち続けた場合の利回り |
|---|---|---|---|---|
| 買ったとき(2016年10月) | 116.67円 | 11,403.3円 | 1.02% | — |
| 2017年 | 116.67円 | 14,970.0円 | 0.78% | — |
| 2018年 | 146.67円 | 18,790.0円 | 0.78% | 1.29% |
| 2019年 | 160円 | 21,666.7円 | 0.74% | 1.40% |
| 2020年 | 160円 | 30,823.3円 | 0.52% | 1.40% |
| 2021年 | 160円 | 21,770.0円 | 0.73% | 1.40% |
| 2022年 | 206.67円 | 26,843.3円 | 0.77% | 1.81% |
| 2023年 | 290円 | 34,990.0円 | 0.83% | 2.54% |
| 2024年 | 400円 | 53,820.0円 | 0.74% | 3.51% |
| 2025年 | 500円 | 56,940.0円 | 0.88% | 4.38% |
| 今(2026年10月14日) | 850円 | 75,840.0円 | 1.12% | 7.45% |
※1株配当と株価は分割調整後の値です。株価は、買ったときは購入日の株価、各年は年末の株価、今は10月14日の株価です。1株配当は、買ったときと今は直近1年間、各年はその年(1〜12月)の合計です。「その時点の配当利回り」=1株配当÷その時点の株価(その時点で新しく買う人の利回り)。「持ち続けた場合の利回り」=1株配当÷買ったときの株価(2016年に買って持ち続けている人の利回り)。
持ち続けた場合の今の利回りは7.45%です。買ったときの1.02%から、持ち続けて増配を受け取ることで約7.3倍に上がっています。買ったときの利回りが低くても、増配が続けば、持ち続けている自分にとっての利回りは年々上がっていきます。一方で、今新しくこの株を買う人の利回りは1.12%です。
僕が高配当株を選ぶときの利回りの目安は3.5〜4%くらいです。ファーストリテイリングの買ったときの利回り1.02%は、この目安より低い水準でした。

3. この10年で何が株価と配当を動かしたのか
① 10年で売上は2倍以上に
買った直後の2016年8月期、ファーストリテイリングは増収減益でした。売上収益は1兆7,864億円でしたが、暖冬や値上げ、為替の影響で営業利益は前期比22.6%減の1,272億円でした(ログミーFinance 2016年8月期 決算説明会)。
そこから10年。2026年8月期の売上収益は3兆9,633億円で、2016年8月期の2倍以上になりました。会社は「5期連続で過去最高の業績を達成」としています(ファーストリテイリング 2026年8月期 決算サマリー)。
② コロナで大きく落ち込んだ2020年8月期
ずっと順調だったわけではありません。2020年8月期は、新型コロナによる店舗の臨時休業で、売上収益が前期比12.3%減、営業利益が42%減になりました(FASHIONSNAP(2020年10月15日))。
この時期、1年分の配当は160円(分割調整後)のまま据え置かれました。減らさずに耐えて、業績が戻ってから一気に増やしたのが、この会社の配当の形です。
③ 海外ユニクロの成長と、大幅な増配
この10年で一番大きかったのは、海外のユニクロです。2026年8月期は、海外ユニクロ事業の売上収益が2兆4,111億円(26.2%増)、事業利益が4,398億円(44.1%増)で、すべての地域で2桁の増収増益だったと報じられています(ビジネス+IT(2026年10月8日))。
配当も大きく動きました。2026年8月期の年間配当は850円で、前期の500円から350円の増配です。2027年8月期は年間900円の予想です。会社は配当方針を「事業成長に向けた成長投資を最優先としつつ、高還元を両立」としています(ファーストリテイリング 2026年8月期 決算サマリー)。
「日本の服屋さん」は、この10年で「世界で稼ぐ会社」になっていました。
4. 僕の場合:ファーストリテイリングの10年を見て考えたこと
10年前の配当利回りは1.02%でした。そのころに「持ち続ければ利回りは7%を超えるよ」と言われても、僕は信じられなかったので、買っていないと思います。成長企業なので、配当より会社の成長にお金を使う会社だと判断したはずです。
それでも、買わなくても有名な株を追いかけることで、株の勉強になると感じました。
僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、NISAの外で日本の高配当株にも投資しています。
今回の結果を見て、考えたことは3つです。
1つ目は、「増配が続けば、取得額に対する利回りは育つ」ということを、数字で見られたことです。僕は、買うか悩む株価でも、増配が続く前提なら「将来の増配を考えれば今の株価は安い」と考えるようにしています。ファーストリテイリングは、まさにその極端な例でした。買ったときの利回りは1.02%。それが持ち続けることで、今は7.45%です。買ったときの利回りは、ゴールではなくスタート地点なのだと感じました。
2つ目は、それでも「その時点の利回り」はずっと1%前後だった、ということです。株価も配当と一緒に上がってきたので、新しく買う人にとっての利回りは、10年間ずっと0.5〜1%ほどでした。僕の目安の3.5〜4%に届いた年は一度もありません。高配当株を探すやり方では、この株にはそもそも出会えなかったことになります。
3つ目は、「入口の大きさ」です。10年前は100株で342万円が必要でした。分割があった今でも、100株だと700万円を超えます。会社員が一度に入れるには大きな金額です。僕の投資の考え方でも書いたとおり、僕は将来のお金はインデックスで育て、今のお金のプラスは配当で充実させると決めています。こうした大きな成長企業の伸びは、S&P500や市場全体に投資することで、少しずつ受け取るほうが僕には合っていると思いました。
僕の買い方ルールで判定すると
最後に、僕が高配当株を選ぶときのルールで、今の時点のファーストリテイリングを判定してみます。
| ルール | 今の状況 | 判定 |
|---|---|---|
| ① 売上・利益(10年単位) | 売上収益は2016年8月期の1兆7,864億円から2026年8月期の3兆9,633億円へ。営業利益が減ったのは2020年8月期だけで、理由はコロナによる店舗の臨時休業(IRBANK 業績推移、FASHIONSNAP) | ○ |
| ② 10年増配(減配なし) | 決算期ごとの年間配当(分割調整後)で減配はなし。ただし2017年8月期は前期と同じ116.67円で据え置き(コロナ期以外)。2020・2021年8月期の160円据え置きはコロナ期(IRBANK、株配DB)。僕のルールでは、コロナ期以外の据え置きはNG | × |
| ③ PBR | 8.18倍(2026年10月14日、マネックス銘柄スカウター)。JPXの業種別PBRでは、プライム市場の小売業は2.5倍(2026年9月末、KabuGraph(JPXデータ)) | × |
| ④ 配当利回り3.5〜4% | 1.12%(直近1年の配当850円÷株価75,840円) | × |
| 補足 利益が増えた年は増配しているか | 当期利益が増えた年のうち、2017年8月期は116.67円で据え置き(コロナ期以外)。2021年8月期の据え置きはコロナ期。それ以外は増配(IRBANK) | △ |
| 補足 配当性向30〜40% | 2026年8月期は48.1%。2024年8月期33%、2025年8月期35.4%から、大幅増配で上がった(IRBANK)。会社の方針は「成長投資を最優先としつつ、高還元を両立」 | △ |
僕のルールでは見送りです。業績の伸びと増配の力はとても強い会社ですが、コロナ期以外に配当の据え置きがあり、PBRが業種平均を大きく上回り、配当利回りも1%台で、僕の高配当株の基準からは離れているためです。
※僕の自己流のルールで判定した、僕自身の判断です。この株の購入や売却を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。
このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。
「いい会社」と「僕のルールに合う株」は、同じとは限りません。

5. 今日からできること
- 持っている株の「取得額に対する配当利回り」を計算してみる:1年の配当 ÷ 買ったときの金額。例えば10万円で買って年3,000円なら3%です
- 気になる会社の「配当の推移」を10年分見てみる:会社のIRページで、減配した年や据え置いた年がないか、あればその理由は何かを確認します
- PBRを「業種の平均」と比べてみる:JPXが毎月、業種別のPBRを公表しています。数字だけで高い・安いを決めず、同じ業種と並べてみます
6. まとめ

- 10年前にファーストリテイリングを100株(3,421,000円)買っていたら、株+配当で23,649,000円、6.91倍になっていた
- 2023年の株式分割(1株→3株)で、今は300株
- 10年の配当合計は897,000円。取得額に対する配当利回りは4.38%(2025年)、今の配当で計算すると7.45%
- コロナ期は配当を据え置き、その後は大きく増配。2026年8月期は年間850円
- 僕の買い方ルールでの判定は「見送り」。PBRと配当利回りが基準から離れている
過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。
次回は、時価総額10位のソニーグループを取り上げる予定です。
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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(9983.T)、データ取得日 2026年10月14日。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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