「日本でいちばん有名な会社の株を10年前に買っていたら、どうなっていたんだろう?」
シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の3社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。
今回は、時価総額3位のトヨタ自動車(7203)です。
前回までの三菱UFJとソフトバンクグループは、どちらも約7倍でした。トヨタの結果は2.94倍。数字だけ見ると見劣りしますが、中身を見ると「配当」の面で面白い特徴がありました。
この記事で分かること:
- 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
- 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
- この10年で株価と配当を動かしたもの
- 「すごく増えた株」と「着実に増えた株」をどう考えるか
1. 計算の前提
まず、計算のルールです。
- 2016年10月11日の終値で100株を購入
- 配当は再投資せず、受け取るだけ
- 税金・手数料は考えない(税引き前)
- 株式分割は株数に反映
トヨタは2021年に、1株を5株にする株式分割をしています。2021年5月12日に発表され、9月30日時点の株主が対象でした(ビジネス+IT)。
そのため、最初に買った100株は、今は500株になっています。データはYahoo Financeから取得し、2026年10月9日時点の終値で計算しました。
分割の前は株価が1万円を超えていた時期もあり、100株買うには100万円以上が必要でした。分割で最低投資額が下がり、個人が買いやすくなったと報じられています(秋田魁新報(共同通信))。
当時の株価と今の株価を並べるときは、必ず「株数が何倍になったか」もセットで見る。これがこのシリーズの基本です。
2. 結果:100株が2.94倍に
結果はこうなりました。
| 買った日 | 2016年10月11日 |
| 当時の株価 | 6,015円 |
| 投資額(100株) | 601,500円 |
| 今の株数 | 500株(分割による) |
| 今の株価(2026年10月9日) | 2,910.5円 |
| 今の評価額 | 1,455,250円 |
| 株の値上がり率 | +141.9% |
| 10年間の配当合計 | 312,000円 |
| 株+配当の合計 | 1,767,250円 |
| トータルリターン | +193.8%(2.94倍) |
60万1,500円が、株と配当を合わせて176万7,250円。約2.9倍です。
注目したいのは配当です。10年間の配当合計は312,000円。最初の投資額601,500円の半分以上が、配当だけで戻ってきた計算になります。

① 配当が毎年いくら入ったか
配当の流れを年ごとに見てみます。1株配当は、今の500株に合わせた「分割調整後」の金額です。
| 年 | 1株配当(分割調整後) | 受け取った配当 | 年末の評価額 | 累計配当 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年※ | 0円 | 0円 | 687,800円 | 0円 |
| 2017年 | 42円 | 21,000円 | 721,300円 | 21,000円 |
| 2018年 | 44円 | 22,000円 | 640,600円 | 43,000円 |
| 2019年 | 44円 | 22,000円 | 771,400円 | 65,000円 |
| 2020年 | 45円 | 22,500円 | 795,700円 | 87,500円 |
| 2021年 | 51円 | 25,500円 | 1,052,750円 | 113,000円 |
| 2022年 | 53円 | 26,500円 | 906,250円 | 139,500円 |
| 2023年 | 65円 | 32,500円 | 1,295,250円 | 172,000円 |
| 2024年 | 85円 | 42,500円 | 1,573,000円 | 214,500円 |
| 2025年 | 95円 | 47,500円 | 1,678,000円 | 262,000円 |
| 2026年※ | 100円 | 50,000円 | 1,455,250円 | 312,000円 |
※2016年は10月11日からの約3か月、2026年は10月9日までのデータで、どちらも1年分ではありません。2026年の「年末の評価額」は10月9日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したもので、会社の決算期(3月期)ごとの年間配当とは区切りがずれます。
年間の配当は、2017年の21,000円から2025年の47,500円へ。2倍以上に増えています。しかも表を見ると、この10年で前の年より配当が減った年はありません。
② 取得額に対する配当利回りは7.9%
直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは7.9%です。
買った当時の配当(2017年の21,000円)は、投資額に対して3%台でした。それが、持ち続けているあいだに配当が増えて、10年後には8%近くになった。配当が育つと、最初に買った値段に対する利回りがどんどん上がっていきます。
③ 株価は「右肩上がり」ではなかった
一方で、株価の動きはまっすぐではありません。年末の評価額を見ると、下がった年が何度かあります。
- 2018年末:721,300円 → 640,600円
- 2022年末:1,052,750円 → 906,250円
- 2026年(10月9日時点):2025年末の1,678,000円 → 1,455,250円
2016年末から2020年末までの4年間は、評価額が70万円前後でほとんど動いていません。4年間ほぼ横ばいでも、配当だけは毎年入ってきていたのが、この表から分かります。
株価が動かない時期でも、配当が「持ち続ける理由」になる。それを数字で見せてくれるのが、トヨタの10年です。

3. この10年で何が株価と配当を動かしたのか
① 過去最高益と営業利益5兆円(2024年3月期)
大きな転機は、2023年度の決算です。トヨタが2024年5月8日に発表した2024年3月期の連結決算は、営業利益が前期比96.4%増の5兆3,529億円で、過去最高を更新しました。営業利益が5兆円を超えたのは日本企業で初めてと報じられています(Car Watch)。
表を見ると、2023年から2024年にかけて1株配当が65円→85円と大きく増え、年末の評価額も2024年末に1,573,000円まで伸びています。利益が大きく増えた時期と重なります。
② 「安定的・継続的な増配」という方針
トヨタは、2026年3月期の中間配当を45円(前の期より5円増)、年間配当の予想を95円(同5円増)とし、「長期保有の株主に報いる安定増配の方針」を続けると説明しています(Car Watch)。
配当表で毎年少しずつ増えているのは、この方針の表れと言えます。
③ 米国の関税と減益(2026年3月期)
一方で、最近は逆風もあります。2026年3月期の決算は、売上高が50兆6,849億円と過去最高でしたが、純利益は3兆8,480億円で前期比19.2%減でした。米国の関税の影響は、営業利益ベースで1兆3,800億円にのぼったと報じられています(秋田魁新報(共同通信))。
同じ記事によると、2027年3月期の純利益は3兆円(前期比22.0%減)の見通しで、中東情勢の悪化も減益の要因に挙げられています。2026年に入って評価額が2025年末より下がっているのは、こうした時期と重なります。
どんなに大きな会社でも、関税や為替のように「自分ではどうにもできないこと」で利益は大きく動きます。

4. 僕の場合:「7倍」と「3倍」をどう見るか
トヨタの10年を見て、僕がいちばん感じたのは、日本のトップ企業のトヨタでさえ、株価は順調な右肩上がりではないということです。上の表のとおり、2016年末から2020年末までの4年間はほぼ横ばいで、途中で下がった年も何度もありました。
だから、値上がりを安定して狙うのは難しいと思っています。
でも、「配当をもらう」という考え方なら話は変わります。途中で株価が上下しても、最終的に業績が右肩上がりになっていればいい。そう考えると、目の前の値動きに振り回されにくくなり、長く持ち続けやすくなります。
株価の右肩上がりは約束されない。見るべきは、業績と配当の右肩上がり。
僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、日本の高配当株にも投資しています。
その立場から、今回のトヨタを見て考えたことは3つです。
1つ目は、「倍率」だけで比べないこと。このシリーズの前2回は約7倍、今回は2.94倍です。倍率だけ見ると差は大きいです。でも、日本を代表する会社でも結果がこれだけ違う、ということ自体が大事な発見でした。10年前の時点で「どの会社が7倍になるか」を当てるのは、僕にはできなかったと思います。
2つ目は、配当が「途中で受け取れるリターン」だということ。トヨタの場合、10年の配当合計312,000円は、最初の投資額の半分を超えています。値上がりの利益は売らないとお金になりませんが、配当は持っているだけで毎年入ってきます。サイドFIREで「生活費の一部を投資から」と考える僕にとって、この安心感は大きいです。
3つ目は、1社に頼らないこと。トヨタのような大企業でも、関税ひとつで利益が1兆円以上動きます。だから僕は、土台はS&P500のような分散の効いたインデックスにして、高配当株はその上に乗せる形にしています。1社の結果で家計が左右されないようにするためです。
このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。
派手に増えなくても、毎年の配当が少しずつ育っていく。サイドFIREには、そういう「地味な強さ」も必要だと思います。
5. 今日からできること
- 気になる会社の「配当の推移」を10年分見てみる:減った年があるか、少しずつでも増えているかを確認します
- 「取得額に対する利回り」で考えてみる:今の利回りだけでなく、配当が増えたら自分の利回りがどうなるかを想像します
- 自分の資産を「配当」と「値上がり」に分けて書き出す:毎年入るお金と、売るまで入らないお金のバランスを確認します
6. まとめ

- 10年前にトヨタ自動車を100株(601,500円)買っていたら、株+配当で1,767,250円、2.94倍になっていた
- 2021年の株式分割(1株→5株)で、100株は500株に増えている
- 配当は2017年の21,000円から2025年の47,500円へ。10年の配当合計は312,000円で、取得額に対する利回りは7.9%
- 過去最高益で伸びた一方、最近は米国の関税などで減益になっている
過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。
次回は、時価総額4位のアドバンテストを取り上げる予定です。
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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(7203.T)、データ取得日 2026年10月9日。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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