「10年前に、あの株を買っておけば…」。投資をしていると、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の7社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。
今回は、時価総額7位の日立製作所(6501)です。家電のイメージが強いかもしれませんが、今は電力の送配電、ITサービス、鉄道などの社会インフラを中心にした会社に変わっています。
結果は11.39倍。前回の三井住友FG(6.54倍)を大きく上回りました。ただ、中身を見ると「配当でじわじわ増えた」三井住友FGとは、まったく違うタイプの10年でした。
この記事で分かること:
- 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
- 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
- 株式併合と株式分割で、株数がどう変わったか
- 新NISAでS&P500を積み立てる僕が、この10年を見て考えたこと
1. 計算の前提
まず、計算のルールです。
- 2016年10月17日の終値で100株を購入
- 配当は再投資せず、受け取るだけ
- 税金・手数料は考えない(税引き前)
- 株式併合・株式分割は株数に反映
日立はこの10年で、株数が変わる出来事が2回ありました。
- 2018年10月1日:5株を1株にまとめる株式併合(あわせて、売買の単位を1,000株から100株に変更)
- 2024年7月1日:1株を5株に分ける株式分割
2018年の変更は、全国の証券取引所が売買単位を100株に統一する方針を示し、その期限が2018年10月1日だったことを受けたものです(日立製作所 単元株式数の変更、株式併合および定款の一部変更に関するお知らせ(2018年4月27日))。2024年の株式分割は、日立のIRページに記載されています(日立製作所 株主還元(配当金・自己株式の取得))。
5株→1株の併合と、1株→5株の分割で、ちょうど打ち消し合います。最初に買った100株は、併合で20株になり、分割で100株に戻っています。
ひとつ注意があります。2016年当時の日立の売買単位は1,000株でした。つまり、実際に取引所で買うには、この記事の100株の10倍の金額が必要でした。シリーズの比べやすさを優先して、今回も100株で計算しています。何倍になったかという結果は、株数が変わっても同じです。
データはYahoo Financeから取得し、2026年10月9日時点の終値で計算しました。
株数が増えたり減ったりしても、持っている「会社の取り分」は変わらない。
2. 結果:100株が11.39倍に
結果はこうなりました。
| 買った日 | 2016年10月17日 |
| 当時の株価 | 523.1円 |
| 投資額(100株) | 52,310円 |
| 今の株数 | 100株(併合と分割が打ち消し合う) |
| 今の株価(2026年10月9日) | 5,669円 |
| 今の評価額 | 566,900円 |
| 株の値上がり率 | +983.7% |
| 10年間の配当合計 | 29,100円 |
| 株+配当の合計 | 596,000円 |
| トータルリターン | +1,039.4%(11.39倍) |
5万2,310円が、株と配当を合わせて59万6,000円。約5万円が、約60万円になった計算です。

① 配当が毎年いくら入ったか
配当の流れを年ごとに見てみます。1株配当は、今の100株に合わせた「併合・分割調整後」の金額です。
| 年 | 1株配当(調整後) | 受け取った配当 | 年末の評価額 | 累計配当 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年※ | 0円 | 0円 | 63,200円 | 0円 |
| 2017年 | 14円 | 1,400円 | 87,790円 | 1,400円 |
| 2018年 | 16円 | 1,600円 | 58,710円 | 3,000円 |
| 2019年 | 19円 | 1,900円 | 92,520円 | 4,900円 |
| 2020年 | 20円 | 2,000円 | 81,300円 | 6,900円 |
| 2021年 | 23円 | 2,300円 | 124,600円 | 9,200円 |
| 2022年 | 27円 | 2,700円 | 133,820円 | 11,900円 |
| 2023年 | 31円 | 3,100円 | 203,400円 | 15,000円 |
| 2024年 | 41円 | 4,100円 | 393,700円 | 19,100円 |
| 2025年 | 45円 | 4,500円 | 490,200円 | 23,600円 |
| 2026年※ | 55円 | 5,500円 | 566,900円 | 29,100円 |
※2016年は10月17日からの約2か月半、2026年は10月9日までのデータで、どちらも1年分ではありません。2026年の「年末の評価額」は10月9日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したもので、会社の決算期(3月期)ごとの年間配当とは区切りがずれます。配当は権利落ち日の年に計上しているため、2026年には9月末が基準日の中間配当(Yahoo Financeの記録では1株28円)も含みます。
※2018年分について:Yahoo Financeのデータでは、株式併合の直前(2018年9月)の中間配当が1株1.6円と、併合の基準で割られた小さい金額で記録されていました。日立の公表では、2018年度の中間配当は併合前の1株あたり8円です(日立製作所 株主還元)。この配当は併合前の株数を基準に支払われるため、会社の公表値(8円)で計算し直しています。
年間の配当は、2017年の1,400円から2025年の4,500円へ。暦年で見た配当は、10年間一度も減っていません。
② 取得額に対する配当利回りは8.6%
直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは8.6%です。最初に出した5万2,310円に対して、1年で4,500円の配当が入ってくる計算です。
③ 主役は配当ではなく「株価」
今回いちばん目立つのは、配当と株価のバランスです。今の評価額566,900円に対して、10年の配当合計は29,100円。11.39倍のほとんどは、株価の値上がりによるものです。
しかも、伸び方は一直線ではありません。
- 2017年末:87,790円 → 2018年末:58,710円(1年で大きく下落)
- 2019年末:92,520円 → 2020年末:81,300円(再び下落)
- 2023年末:203,400円 → 2024年末:393,700円(1年で大きく上昇)
最初の5年ほどは、評価額が5万〜9万円台を行ったり来たりしていました。大きく伸びたのは2021年以降で、特に2024年の1年だけで、評価額は約2倍になっています。
11.39倍の大部分は、最後の数年に「まとめてやってきた」値上がりでした。
配当利回りはどうだった?(買ったときと、持ち続けた場合)
「この株を買うかどうか」を考えるには、配当利回りを知ることが欠かせません。買ったときの利回りと、その後の利回りの変化を計算しました。
買ったとき(2016年10月17日)の配当利回りは2.29%です。買う前の1年間に支払われた1株配当12円を、買ったときの株価523.1円で割った値です(どちらも分割調整後)。
| 時点 | 1株配当 | 株価 | その時点の配当利回り | 持ち続けた場合の利回り |
|---|---|---|---|---|
| 買ったとき(2016年10月) | 12円 | 523.1円 | 2.29% | — |
| 2017年 | 14円 | 877.9円 | 1.59% | — |
| 2018年 | 16円 | 587.1円 | 2.73% | 3.06% |
| 2019年 | 19円 | 925.2円 | 2.05% | 3.63% |
| 2020年 | 20円 | 813.0円 | 2.46% | 3.82% |
| 2021年 | 23円 | 1,246.0円 | 1.85% | 4.40% |
| 2022年 | 27円 | 1,338.2円 | 2.02% | 5.16% |
| 2023年 | 31円 | 2,034.0円 | 1.52% | 5.93% |
| 2024年 | 41円 | 3,937.0円 | 1.04% | 7.84% |
| 2025年 | 45円 | 4,902.0円 | 0.92% | 8.60% |
| 今(2026年10月9日) | 55円 | 5,669.0円 | 0.97% | 10.51% |
※1株配当と株価は分割調整後の値です。株価は、買ったときは購入日の株価、各年は年末の株価、今は10月9日の株価です。1株配当は、買ったときと今は直近1年間、各年はその年(1〜12月)の合計です。「その時点の配当利回り」=1株配当÷その時点の株価(その時点で新しく買う人の利回り)。「持ち続けた場合の利回り」=1株配当÷買ったときの株価(2016年に買って持ち続けている人の利回り)。
持ち続けた場合の今の利回りは10.51%です。買ったときの2.29%から、持ち続けて増配を受け取ることで約4.6倍に上がっています。買ったときの利回りが低くても、増配が続けば、持ち続けている自分にとっての利回りは年々上がっていきます。一方で、今新しくこの株を買う人の利回りは0.97%です。
僕が高配当株を選ぶときの利回りの目安は3.5〜4%くらいです。日立の買ったときの利回り2.29%は、この目安より低い水準でした。

3. この10年で何が株価と配当を動かしたのか
① 上場子会社を手放す「事業の組み替え」
日立は、グループの中にたくさんの上場子会社を抱えていました。この10年で、その整理を大きく進めています。
- 2019年末:日立化成を昭和電工へ売却することを決定。日立ハイテクノロジーズはTOBで完全子会社化を発表(ニュースイッチ(2020年10月23日))
- 2022年10月:ベインキャピタル主導の連合による日立金属のTOBが成立。日立は保有する日立金属株を売却(ビジネス+IT/ロイター(2022年10月26日))
「何でも作る会社」から、得意分野に絞った会社へ。この組み替えが、後半の伸びの土台になったと考えられます。
② デジタル事業の強化(GlobalLogicの買収)
2021年7月、日立は米国のGlobalLogic社の買収を完了しました。デジタル技術で社会インフラの課題を解決する「Lumada(ルマーダ)」事業を、世界に広げるための買収です(ビジネス+IT(2021年7月14日))。
③ AI時代の「電力」需要
直近の追い風は、電力です。2026年4月27日に発表された2026年3月期の決算では、純利益が8,023億円(前期比30.3%増)で過去最高となりました。送電網の更新と、AI向けの投資拡大によるデータセンター関連の需要が背景とされています(共同通信(OANDA掲載、2026年4月27日))。
同じ決算では、売上収益も10兆5,867億円と過去最高で、エナジー分野ではパワーグリッド(送配電)事業が好調だったと報じられています(マイナビニュース TECH+(2026年4月30日))。
④ 配当の決め方
日立は、配当を安定的に実施し、自己株式の取得は機動的に行う方針を示しています(日立製作所 株主還元)。前回の三井住友FGのように「配当性向〇%」「累進配当」といった数字の約束ではなく、配当と自社株買いを合わせて株主に還元するという考え方です。
株価を押し上げたのは、会社そのものの「中身の入れ替え」でした。
4. 僕の場合:日立の10年を見て考えたこと
僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、NISAの外で日本の高配当株にも投資しています。
今回の結果を見て、考えたことは3つです。
1つ目は、「配当が少ない株」を僕は持ち続けられたか、です。10年で11.39倍は、とても大きな数字です。でも、前半の5年は評価額が上下を繰り返し、配当も年に1,400〜2,300円ほどでした。僕は、値上がりだけの株とは長く付き合う自信がありません。もし僕が持っていたら、2018年の下落あたりで手放していたかもしれないと、正直に思います。
2つ目は、「この会社が10年でここまで変わる」と当時の僕には分からなかった、ということです。上場子会社の売却、海外企業の買収、そしてAIによる電力需要。どれも10年前の時点で予想するのは難しいことです。だからこそ僕は、未来の勝者を当てるより、市場全体をまるごと持つS&P500の積立を土台にしています。僕の投資の考え方でも書いたとおり、波に乗る投資より、波に落とされない投資を選んでいます。
3つ目は、「株価で増える会社」と「配当で支える会社」の違いです。シリーズの三菱UFJや三井住友FGは、株価が動かない時期を配当が支えていました。日立は、配当も毎年増えていますが、主役はあくまで株価です。どちらが良い悪いではなく、自分がどちらのタイプなら安心して持ち続けられるかを知っておくことが大事だと感じました。
僕の買い方ルールで判定すると
最後に、僕が高配当株を選ぶときのルールで、今の時点の日立を判定してみます。
| ルール | 今の状況 | 判定 |
|---|---|---|
| ① 売上・利益(10年単位) | 営業利益は2016年3月期の6,349億円から2026年3月期の1兆1,992億円へ、当期利益も1,722億円から8,024億円へ増加。売上収益の上下は事業の売却や再編によるもので、利益は回復・拡大(IRBANK) | ○ |
| ② 10年増配(減配なし、コロナ期以外の据え置きなし) | 1株配当は2016年3月期の12円から2026年3月期の50円まで、毎年増配(併合・分割調整後)(IRBANK) | ○ |
| ③ PBR | 3.82倍(2026年10月15日、Yahoo Finance)。プライム市場の電気機器の平均は3.7倍(KabuGraph(JPXデータ、2026年9月末の加重平均)) | △ |
| ④ 配当利回り3.5〜4% | 0.97%(上の「配当利回りはどうだった?」の「今」の行) | × |
| 補足 利益が増えた年は増配しているか | 当期利益が増えた年(2017・2018・2021〜2023・2025・2026年3月期)は、すべて増配(IRBANK) | ○ |
| 補足 配当性向30〜40% | 2026年3月期は28.1%(IRBANK) | △ |
僕のルールでは見送りです。業績は10年で大きく伸び、10年連続の増配もルールどおりですが、配当利回りが1%未満のためです。
※僕の自己流のルールで判定した、僕自身の判断です。この株の購入や売却を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。
このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。
大きなリターンは、途中で降りなかった人だけが受け取れる。

5. 今日からできること
- 持っている株の「株価」と「配当」、どちらが主役かを見てみる:評価額と、これまでの配当の合計を並べて書き出します
- 株式分割・併合のお知らせを確認する:株数が変わっても、持っている価値は変わりません。証券会社のアプリで、過去の分割や併合がないかを確認してみます
- 「1年で3割下がったら自分はどうするか」を1行で書いておく:例えば「積立は止めない」など、迷ったときに見返せるルールを決めます
6. まとめ

- 10年前に日立を100株(52,310円)買っていたら、株+配当で596,000円、11.39倍になっていた
- 2018年の株式併合(5株→1株)と2024年の株式分割(1株→5株)で、株数は100株のまま
- 配当は2017年の1,400円から2025年の4,500円へ。暦年で見て一度も減っていない
- ただし、11.39倍のほとんどは株価の値上がり。特に2024年に大きく伸びた
- 背景には、上場子会社の整理、デジタル事業の強化、AI時代の電力需要がある
過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。
次回は、時価総額8位のリクルートホールディングスを取り上げる予定です。
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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(6501.T)、データ取得日 2026年10月9日(2018年9月の中間配当のみ、日立製作所の公表値で補正)。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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