「10年前に、あの株を買っておけば…」。投資をしていると、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の5社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。
今回は、時価総額5位の東京エレクトロン(8035)です。半導体を作るための「製造装置」をつくる会社です(東京エレクトロン公式サイト)。
前回のアドバンテストは、半導体を「検査する装置」の会社で、結果は120.2倍でした。同じ半導体装置の会社でも、東京エレクトロンの結果は22.37倍。こちらも十分すごい数字ですが、中身を見ると、アドバンテストとはかなり違う特徴がありました。
この記事で分かること:
- 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
- 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
- 2回の株式分割で、100株が何株になったか
- 「配当が利益に連動する会社」を見て、僕が考えたこと
1. 計算の前提
まず、計算のルールです。
- 2016年10月13日の終値で100株を購入
- 配当は再投資せず、受け取るだけ
- 税金・手数料は考えない(税引き前)
- 株式分割は株数に反映
東京エレクトロンは、この10年で2回の株式分割をしています。
- 2023年:1株を3株に分割(データ上の分割日は2023年3月30日)
- 2026年:1株を5株に分割(基準日は2026年9月30日、効力発生日は10月1日)
2026年の分割は、2026年5月29日に発表されました。目的は、投資単位あたりの金額を下げて、投資しやすい環境を整え、投資家層を広げることとされています(東京エレクトロン 適時開示(2026年5月29日)、日本経済新聞)。
3倍と5倍の分割を合わせると、最初に買った100株は、今は1,500株になっています。データはYahoo Financeから取得し、2026年10月9日時点の終値で計算しました。
100株が1,500株に。株価の数字だけを見ても、10年の成績は分かりません。
2. 結果:100株が22.37倍に
結果はこうなりました。
| 買った日 | 2016年10月13日 |
| 当時の株価 | 8,884円 |
| 投資額(100株) | 888,400円 |
| 今の株数 | 1,500株(2回の分割による) |
| 今の株価(2026年10月9日) | 12,445円 |
| 今の評価額 | 18,667,500円 |
| 株の値上がり率 | +2,001.2% |
| 10年間の配当合計 | 1,207,998円 |
| 株+配当の合計 | 19,875,498円 |
| トータルリターン | +2,137.2%(22.37倍) |
88万8,400円が、株と配当を合わせて1,987万5,498円。約89万円が、約1,988万円になった計算です。
注目したいのは、当時の投資額です。10年前の株価は8,884円で、100株買うのに約89万円が必要でした。前回のアドバンテスト(約14万円)と比べると、「気軽に買える金額」ではなかった株です。今回の5分割は、まさにこの「買いにくさ」を下げるためのものでした。

① 配当が毎年いくら入ったか
配当の流れを年ごとに見てみます。1株配当は、今の1,500株に合わせた「分割調整後」の金額です。
| 年 | 1株配当(分割調整後) | 受け取った配当 | 年末の評価額 | 累計配当 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年※ | 0円 | 0円 | 1,104,500円 | 0円 |
| 2017年 | 33.4円 | 50,100円 | 2,040,000円 | 50,100円 |
| 2018年 | 50.67円 | 76,000円 | 1,251,500円 | 126,100円 |
| 2019年 | 39.4円 | 59,100円 | 2,392,500円 | 185,200円 |
| 2020年 | 46.8円 | 70,200円 | 3,840,000円 | 255,400円 |
| 2021年 | 70.93円 | 106,400円 | 6,628,000円 | 361,800円 |
| 2022年 | 107.8円 | 161,700円 | 3,888,000円 | 523,500円 |
| 2023年 | 86.53円 | 129,798円 | 7,576,500円 | 653,298円 |
| 2024年 | 102円 | 153,000円 | 7,255,500円 | 806,298円 |
| 2025年 | 118.2円 | 177,300円 | 10,296,000円 | 983,598円 |
| 2026年※ | 149.6円 | 224,400円 | 18,667,500円 | 1,207,998円 |
※2016年は10月13日からの約3か月、2026年は10月9日までのデータで、どちらも1年分ではありません。2026年の「年末の評価額」は10月9日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したもので、会社の決算期(3月期)ごとの年間配当とは区切りがずれます。配当は権利落ち日の年に計上しているため、2026年には12月に支払われる予定の中間配当も含みます。
※2026年分について:Yahoo Financeのデータでは、2026年9月の中間配当が分割前の金額(1株384円)のまま記録されていました。この配当は分割前の株数を基準に支払われるため、会社が公表している分割調整後の金額(1株76.80円)で計算し直しています(東京エレクトロン 配当政策・配当金)。分割前の300株×384円と同じ金額です。
年間の配当は、2017年の50,100円から2025年の177,300円へ。約3.5倍に増えています。
ただ、よく見ると、まっすぐ増えてはいません。2018年の76,000円から2019年は59,100円へ、2022年の161,700円から2023年は129,798円へと、減った年が2回あります。この理由は、次の章で説明する配当の決め方にあります。
② 取得額に対する配当利回りは19.96%
直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは19.96%です。最初に出した88万8,400円に対して、1年で約2割の配当が入ってくる計算です。
10年の配当合計は1,207,998円で、配当だけで最初の投資額を超えています。アドバンテストの配当合計が投資額に届かなかったのとは、ここが大きく違います。
③ 評価額は何度も大きく下がった
年末の評価額を見ると、22倍への道もまっすぐではありませんでした。
- 2017年末 → 2018年末:2,040,000円 → 1,251,500円(約4割減)
- 2021年末 → 2022年末:6,628,000円 → 3,888,000円(約4割減)
- 2023年末 → 2024年末:7,576,500円 → 7,255,500円(少し下落)
- 2025年末 → 2026年10月:10,296,000円 → 18,667,500円
1年で評価額が4割ほど減った年が、2回もあります。660万円あった資産が、1年後に390万円になる。数字で書くと簡単ですが、実際に持っていたら、かなり不安になる下がり方だと思います。
22倍の裏には、「1年で4割減る」を2回乗り越えた時間があります。
配当利回りはどうだった?(買ったときと、持ち続けた場合)
「この株を買うかどうか」を考えるには、配当利回りを知ることが欠かせません。買ったときの利回りと、その後の利回りの変化を計算しました。
買ったとき(2016年10月13日)の配当利回りは2.70%です。買う前の1年間に支払われた1株配当16円を、買ったときの株価592.3円で割った値です(どちらも分割調整後)。分割前の当時の実際の金額でいうと、1株配当240円÷株価8,884円で、同じ利回りになります。
| 時点 | 1株配当 | 株価 | その時点の配当利回り | 持ち続けた場合の利回り |
|---|---|---|---|---|
| 買ったとき(2016年10月) | 16円 | 592.3円 | 2.70% | — |
| 2017年 | 33.4円 | 1,360.0円 | 2.46% | — |
| 2018年 | 50.67円 | 834.3円 | 6.07% | 8.55% |
| 2019年 | 39.4円 | 1,595.0円 | 2.47% | 6.65% |
| 2020年 | 46.8円 | 2,560.0円 | 1.83% | 7.90% |
| 2021年 | 70.93円 | 4,418.7円 | 1.61% | 11.98% |
| 2022年 | 107.8円 | 2,592.0円 | 4.16% | 18.20% |
| 2023年 | 86.53円 | 5,051.0円 | 1.71% | 14.61% |
| 2024年 | 102円 | 4,837.0円 | 2.11% | 17.22% |
| 2025年 | 118.2円 | 6,864.0円 | 1.72% | 19.96% |
| 今(2026年10月9日) | 149.6円 | 12,445.0円 | 1.20% | 25.26% |
※1株配当と株価は分割調整後の値です。株価は、買ったときは購入日の株価、各年は年末の株価、今は10月9日の株価です。1株配当は、買ったときと今は直近1年間、各年はその年(1〜12月)の合計です。「その時点の配当利回り」=1株配当÷その時点の株価(その時点で新しく買う人の利回り)。「持ち続けた場合の利回り」=1株配当÷買ったときの株価(2016年に買って持ち続けている人の利回り)。
持ち続けた場合の今の利回りは25.26%です。買ったときの2.70%から、持ち続けて増配を受け取ることで約9.4倍に上がっています。買ったときの利回りが低くても、増配が続けば、持ち続けている自分にとっての利回りは年々上がっていきます。一方で、今新しくこの株を買う人の利回りは1.20%です。
僕が高配当株を選ぶときの利回りの目安は3.5〜4%くらいです。東京エレクトロンの買ったときの利回り2.70%は、この目安より低い水準でした。

3. この10年で何が株価と配当を動かしたのか
① 配当は「利益の50%」が目安
東京エレクトロンは、業績連動型の配当を続けています。親会社株主に帰属する当期純利益の50%を、配当性向の目処にしています(東京エレクトロン 配当政策・配当金)。
つまり、利益が増えれば配当も増え、利益が減れば配当も減る仕組みです。表で配当が減った年があるのは、この方針によるものと考えられます。一方で、1株当たりの年間配当は10円(分割調整後)を下回らないという下限も決めています(同上)。
会社が公表している分割調整後の年間配当は、2024年3月期が78.60円、2025年3月期が118.40円、2026年3月期が125.60円です。2027年3月期は、中間配当として76.80円が予定されています(同上)。
「毎年必ず増える配当」ではなく、「会社の稼ぎと一緒に動く配当」。高配当株を選ぶときにも、この違いは知っておきたいポイントです。
② AIサーバー向けの需要
2026年3月期の売上高は前期比0.5%増の2兆4,435億円、営業利益は同10.4%減の6,249億円でした。一方、2026年4〜9月期の見通しは、売上高が前年同期比33.1%増の1兆5,700億円、営業利益が同42.2%増の4,310億円です。AIサーバー向けのDRAMや先端ロジック半導体の需要が、業績をけん引すると報じられています(ニュースイッチ(日刊工業新聞))。
表で2025年末から2026年10月にかけて評価額が大きく増えているのは、こうした見通しが出た時期と重なります。
③ 株式分割と自社株買い
2026年5月には、5分割とあわせて、上限1,500億円の自社株買いも発表されています(日本経済新聞)。
株式分割そのものは、株数と株価の水準が変わるだけで、会社の価値は変わりません。ただ、100株単位で買う日本株では、1回に必要なお金が下がると、個人投資家が参加しやすくなります。
配当の「中身」を知ると、減配の年に慌てずにすみます。

4. 僕の場合:東京エレクトロンの10年を見て考えたこと
正直に言うと、22倍という数字は、前回のアドバンテストと同じく宝くじの話のように見えました。それでも世の中には、半導体業界がここまで盛り上がると読んで、10年前から仕込んでいた人もいるのだと思います。うらやましいです。
ただ、僕がいちばん心を動かされたのは、値上がりよりも配当のほうでした。10年間の配当の合計(1,207,998円)が、最初の購入費(888,400円)を超えている。株を1株も売らずに、配当だけで元が取れているということです。
値上がりを当てるのは、僕にはできません。でも、配当を受け取りながら長く持ち続けることなら、一般人の僕にもできます。この「配当で元が取れる」ほうに希望を持って、投資を続けていきたいと思いました。
値上がりは当てられなくても、配当は積み上げられる。
僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、日本の高配当株にも投資しています。
今回の結果を見て、考えたことは3つです。
1つ目は、「配当利回り19.96%」は、後からついてくる数字だということです。10年前の東京エレクトロンは、高配当株として買われるような株ではなかったと思います。それでも、利益が大きく伸びたことで、最初の投資額に対する配当利回りは2割近くになりました。「今の利回りが高い株」だけを探すのとは、まったく別の道です。
2つ目は、業績連動型の配当とどう付き合うかです。僕が高配当株に期待しているのは、「毎年の現金収入」です。生活費の一部に配当を当てたいサイドFIREでは、配当が減る年があると計画が立てにくくなります。東京エレクトロンのように「利益の50%」と決めている会社は、配当が伸びるときは大きく伸びますが、減るときもある。僕なら、こうした会社の配当は「毎年あてにするお金」ではなく「増えたらうれしいボーナス」として考えます。
3つ目は、やはり「途中で降りない仕組み」が大事だということです。1年で4割減る年が2回あった株を、10年持ち続けるのは簡単ではありません。僕がS&P500の積立を土台にしているのは、1社の浮き沈みに気持ちを振り回されにくいからです。前回のアドバンテストのときと同じ結論ですが、22倍の株を見て、あらためてそう感じました。
僕の買い方ルールで判定すると
最後に、僕が高配当株を選ぶときのルールで、今の時点の東京エレクトロンを判定してみます。
| ルール | 今の状況 | 判定 |
|---|---|---|
| ① 売上・利益(10年単位) | 売上高は2016年3月期の6,639億円から2026年3月期の2兆4,435億円へ、営業利益は1,168億円から6,249億円へ増加。2020・2024年3月期の減少は半導体の波によるもので、その後回復(IRBANK) | ○ |
| ② 10年増配(減配なし、コロナ期以外の据え置きなし) | 2020年3月期(50.53円→39.2円)と2024年3月期(114.07円→78.6円)に減配(分割調整後)。利益の50%を配当にする業績連動型のため(IRBANK) | × |
| ③ PBR | 11.00倍(2026年10月15日、Yahoo Finance)。プライム市場の電気機器の平均は3.7倍(KabuGraph(JPXデータ、2026年9月末の加重平均)) | × |
| ④ 配当利回り3.5〜4% | 1.20%(上の「配当利回りはどうだった?」の「今」の行) | × |
| 補足 利益が増えた年は増配しているか | 当期利益が増えた年(2017〜2019・2021〜2023・2025・2026年3月期)は、すべて増配(業績連動型のため)(IRBANK) | ○ |
| 補足 配当性向30〜40% | 配当性向50%を目安にしていて、2026年3月期は50.1%(IRBANK) | △ |
僕のルールでは見送りです。業績も配当も大きく育っていますが、業績連動型のため減配の年があり、PBRも業種平均を大きく上回り、配当利回りも1%台のためです。
※僕の自己流のルールで判定した、僕自身の判断です。この株の購入や売却を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。
このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。
「どの株が上がるか」より、「どんな配当なら自分の計画に組み込めるか」を考えたい。
5. 今日からできること
- 持っている高配当株の「配当方針」を1社だけ調べてみる:会社のIRページで「配当性向〇%」「累進配当」「下限〇円」など、どんな決め方なのかを確認します
- 配当を「あてにするお金」と「ボーナス」に分けてみる:減配の可能性がある配当は、生活費の計算に入れすぎないようにします
- 評価額が4割減ったら自分はどうするか、1行で書いておく:例えば「積立は止めない」など、迷ったときに見返せるルールを決めます
6. まとめ

- 10年前に東京エレクトロンを100株(888,400円)買っていたら、株+配当で19,875,498円、22.37倍になっていた
- 2023年(1株→3株)と2026年(1株→5株)の株式分割で、100株は1,500株に増えている
- 配当は2017年の50,100円から2025年の177,300円へ。10年の配当合計は1,207,998円で、最初の投資額を超えた
- 配当は利益の50%が目安の業績連動型。そのため、配当が減った年も2回あった
- 評価額が1年で約4割減った年が2回あり、決して平らな道ではなかった
過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。
次回は、時価総額6位の三井住友フィナンシャルグループを取り上げる予定です。シリーズ1社目の三菱UFJと同じメガバンクで、結果がどう違うのかを見てみます。
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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(8035.T)、データ取得日 2026年10月9日(2026年9月の中間配当のみ、東京エレクトロンの公表値で補正)。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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