「10年前に、あの株を買っておけば…」。投資をしていると、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の4社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。
今回は、時価総額4位のアドバンテスト(6857)です。半導体が正しく動くかを調べる「テスタ(検査装置)」で、高い世界シェアを持つ会社です(マネーポストWEB)。
前回のトヨタは2.94倍、その前の三菱UFJとソフトバンクグループは約7倍でした。そして今回の結果は、120.2倍。計算を見直したくなるほどの数字です。
この記事で分かること:
- 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
- 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
- この10年で株価を動かしたもの
- 「120倍の株」を見て、僕が自分の投資について考えたこと
1. 計算の前提
まず、計算のルールです。
- 2016年10月12日の終値で100株を購入
- 配当は再投資せず、受け取るだけ
- 税金・手数料は考えない(税引き前)
- 株式分割は株数に反映
アドバンテストは2023年に、1株を4株にする株式分割をしています。2023年5月19日に発表され、9月30日を基準日、10月1日を効力発生日として実施されました(ビジネス+IT)。
そのため、最初に買った100株は、今は400株になっています。データはYahoo Financeから取得し、2026年10月9日時点の終値で計算しました。
当時の株価と今の株価を並べるときは、必ず「株数が何倍になったか」もセットで見る。これがこのシリーズの基本です。
2. 結果:100株が120.2倍に
結果はこうなりました。
| 買った日 | 2016年10月12日 |
| 当時の株価 | 1,394円 |
| 投資額(100株) | 139,400円 |
| 今の株数 | 400株(分割による) |
| 今の株価(2026年10月9日) | 41,610円 |
| 今の評価額 | 16,644,000円 |
| 株の値上がり率 | +11,839.7% |
| 10年間の配当合計 | 112,000円 |
| 株+配当の合計 | 16,756,000円 |
| トータルリターン | +11,920.1%(120.2倍) |
13万9,400円が、株と配当を合わせて1,675万6,000円。約14万円が、約1,676万円になった計算です。
しかも、10年前の株価は1,394円。100株でも14万円ほどで買えた金額です。「特別なお金持ちでなくても買えた株」が、10年で家1軒分に近い金額になっていたことになります。

① 配当が毎年いくら入ったか
配当の流れを年ごとに見てみます。1株配当は、今の400株に合わせた「分割調整後」の金額です。
| 年 | 1株配当(分割調整後) | 受け取った配当 | 年末の評価額 | 累計配当 |
|---|---|---|---|---|
| 2016年※ | 0円 | 0円 | 196,800円 | 0円 |
| 2017年 | 5.25円 | 2,100円 | 209,100円 | 2,100円 |
| 2018年 | 18.25円 | 7,300円 | 224,400円 | 9,400円 |
| 2019年 | 20.75円 | 8,300円 | 616,000円 | 17,700円 |
| 2020年 | 19.75円 | 7,900円 | 773,000円 | 25,600円 |
| 2021年 | 32.5円 | 13,000円 | 1,090,000円 | 38,600円 |
| 2022年 | 33.75円 | 13,500円 | 848,000円 | 52,100円 |
| 2023年 | 33.75円 | 13,500円 | 1,918,800円 | 65,600円 |
| 2024年 | 37円 | 14,800円 | 3,679,200円 | 80,400円 |
| 2025年 | 49円 | 19,600円 | 7,854,000円 | 100,000円 |
| 2026年※ | 30円 | 12,000円 | 16,644,000円 | 112,000円 |
※2016年は10月12日からの約3か月、2026年は10月9日までのデータで、どちらも1年分ではありません。2026年の「年末の評価額」は10月9日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したもので、会社の決算期(3月期)ごとの年間配当とは区切りがずれます。
年間の配当は、2017年の2,100円から2025年の19,600円へ。金額は小さいものの、9倍以上に増えています。
② 取得額に対する配当利回りは14.06%
直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは14.06%です。
ただ、アドバンテストの10年は「配当の株」というより、明らかに「値上がりの株」です。10年の配当合計は112,000円で、株の評価額16,644,000円と比べると、ほんの一部にすぎません。
前回のトヨタでは、配当合計が投資額の半分を超えていました。同じ「10年持ち続けた」でも、リターンの中身がまったく違います。
③ 最初の3年はほぼ横ばいだった
年末の評価額を見ると、120倍への道はまっすぐではありませんでした。
- 2016年末〜2018年末:196,800円 → 224,400円(3年間ほぼ横ばい)
- 2022年末:前の年の1,090,000円 → 848,000円に下落
- 2023年末〜2026年10月:1,918,800円 → 16,644,000円
大きく増えたのは、ここ3年ほどに集中しています。逆に言えば、最初の数年で「動かないな」と売っていたら、この120倍は手に入らなかったわけです。
大きなリターンは、退屈な時期と下落の時期を「持ち続けた人」にしか届かない。
配当利回りはどうだった?(買ったときと、持ち続けた場合)
「この株を買うかどうか」を考えるには、配当利回りを知ることが欠かせません。買ったときの利回りと、その後の利回りの変化を計算しました。
買ったとき(2016年10月12日)の配当利回りは0.72%です。買う前の1年間に支払われた1株配当2.5円を、買ったときの株価348.5円で割った値です(どちらも分割調整後)。分割前の当時の実際の金額でいうと、1株配当10円÷株価1,394円で、同じ利回りになります。
| 時点 | 1株配当 | 株価 | その時点の配当利回り | 持ち続けた場合の利回り |
|---|---|---|---|---|
| 買ったとき(2016年10月) | 2.5円 | 348.5円 | 0.72% | — |
| 2017年 | 5.25円 | 522.8円 | 1.00% | — |
| 2018年 | 18.25円 | 561.0円 | 3.25% | 5.24% |
| 2019年 | 20.75円 | 1,540.0円 | 1.35% | 5.95% |
| 2020年 | 19.75円 | 1,932.5円 | 1.02% | 5.67% |
| 2021年 | 32.5円 | 2,725.0円 | 1.19% | 9.33% |
| 2022年 | 33.75円 | 2,120.0円 | 1.59% | 9.68% |
| 2023年 | 33.75円 | 4,797.0円 | 0.70% | 9.68% |
| 2024年 | 37円 | 9,198.0円 | 0.40% | 10.62% |
| 2025年 | 49円 | 19,635.0円 | 0.25% | 14.06% |
| 今(2026年10月9日) | 30円 | 41,610.0円 | 0.07% | 8.61% |
※1株配当と株価は分割調整後の値です。株価は、買ったときは購入日の株価、各年は年末の株価、今は10月9日の株価です。1株配当は、買ったときと今は直近1年間、各年はその年(1〜12月)の合計です。「その時点の配当利回り」=1株配当÷その時点の株価(その時点で新しく買う人の利回り)。「持ち続けた場合の利回り」=1株配当÷買ったときの株価(2016年に買って持ち続けている人の利回り)。
持ち続けた場合の今の利回りは8.61%です。買ったときの0.72%から、持ち続けて増配を受け取ることで約12.0倍に上がっています。買ったときの利回りが低くても、増配が続けば、持ち続けている自分にとっての利回りは年々上がっていきます。一方で、今新しくこの株を買う人の利回りは0.07%です。
僕が高配当株を選ぶときの利回りの目安は3.5〜4%くらいです。アドバンテストの買ったときの利回り0.72%は、この目安より低い水準でした。

3. この10年で何が株価を動かしたのか
① 生成AIで「検査」の需要が急増
いちばん大きな理由は、生成AIです。AIデータセンター向けのGPUやAIアクセラレータなどの高性能な半導体は、機能が複雑で検査が難しくなりやすく、それがテスタの需要につながっていると報じられています(マネーポストWEB)。
AI向けの半導体そのものを作る会社ではなく、「ちゃんと動くかを確かめる装置」を作る会社が大きく伸びた。ブームの主役の「周り」にも、チャンスはあるという例だと思います。
② 売上高1兆円を突破、過去最高益(2026年3月期)
2026年3月期の決算は、売上高が1兆1,286億円で初めて1兆円を超え、営業利益は4,991億円、当期利益は3,754億円(前期比132.9%増)と、過去最高を更新しました。営業利益率は44.2%で、前の期の29.3%から大きく上がっています(マネーポストWEB)。
さらに2026年7月29日には、2027年3月期の業績予想を上方修正しました。売上高は1兆4,200億円から1兆7,140億円へ、当期利益は4,655億円から6,600億円へ引き上げられています(マネックス証券 銘柄スカウター)。
表で2025年末から2026年10月にかけて評価額が2倍以上になっているのは、こうした決算の時期と重なります。
③ 半導体には「波」がある
一方で、半導体の業界には好不調の波があります。2025年7月の報道では、顧客の次世代デバイスの量産立ち上げにより、SoCテスタが一時的に調整局面に入る見込みとも伝えられていました(ニュースイッチ(日刊工業新聞))。
2022年に評価額が下がったように、勢いのある会社でも、株価が大きく下がる年はあります。
「今いちばん伸びている業界」は、「いちばん大きく揺れる業界」でもあります。

4. 僕の場合:「120倍」を見て考えたこと
アドバンテストのように当たれば大儲けの株は、正直に言うと宝くじと同じ考え方になってしまいます。それでも、14万円が10年で1,600万円を超えるという話には、夢があります。
ただ、残念ながら一般人の僕には再現性がないと思っています。だから、僕はこの株を買いません。
もう1つの理由は、配当です。成長している業界の会社は、利益を配当よりも設備投資に回す傾向があります。実際、この10年の配当合計112,000円は、評価額に比べればほんの一部でした。配当を受け取りながら長く持つ僕の投資とは、そもそも目的が違います。
今いちばん熱い業界だからといって、簡単に飛びつかない。それが、この120倍を見て僕があらためて決めたことです。
夢は見る。でも、お金は再現性のあるところに置く。
僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、日本の高配当株にも投資しています。
正直に言うと、120倍という数字を見て「うらやましい」と思いました。そのうえで、考えたことは3つです。
1つ目は、「後から見れば分かる」の罠です。今だからAIで伸びた会社だと分かりますが、10年前の時点で、生成AIがここまで広がると予想できたかというと、僕には無理でした。しかも最初の3年はほぼ横ばいです。結果を知っている今の目線で「買っておけば」と考えるのは、少しずるい見方だと思います。
2つ目は、「持ち続ける力」がいちばん難しいということです。もし僕が持っていたら、評価額が2倍、3倍になった時点で利益を確定していたかもしれません。2022年の下落で不安になったかもしれません。120倍の裏には、何度も「売りたくなる場面」があったはずです。
3つ目は、僕の投資の形は変えないということです。1社で大当たりを狙うのではなく、土台はS&P500のような分散の効いたインデックスにして、その上に日本の高配当株を乗せる。サイドFIREに必要なのは「一発の大当たり」ではなく、「途中で退場しないこと」だと考えているからです。
このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。
次の120倍を探すより、自分が10年続けられる投資の形を決めるほうが、ずっと大事だと思います。
5. 今日からできること
- 自分の資産の「値上がり」と「配当」の割合を見てみる:トヨタ型(配当も育つ)とアドバンテスト型(値上がり中心)、自分はどちらに寄っているかを確認します
- 「下がったときに売らないルール」を1行で書いておく:例えば「積立は暴落しても止めない」など、迷ったときに見返せる言葉を決めます
- 1社に偏りすぎていないか確認する:1つの業界や会社が大きな割合を占めていないか、保有一覧を見直します
6. まとめ

- 10年前にアドバンテストを100株(139,400円)買っていたら、株+配当で16,756,000円、120.2倍になっていた
- 2023年の株式分割(1株→4株)で、100株は400株に増えている
- 配当は2017年の2,100円から2025年の19,600円へ。10年の配当合計は112,000円で、リターンのほとんどは値上がりによるもの
- 大きく伸びたのはここ3年ほど。生成AI向け半導体のテスタ需要が背景にある
- 最初の3年はほぼ横ばいで、2022年には下落した年もあった
過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。
次回は、時価総額5位の東京エレクトロンを取り上げる予定です。同じ半導体関連の会社で、結果がどう違うのかを見てみます。
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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(6857.T)、データ取得日 2026年10月9日。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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