JTの配当推移と株価|10年前に100株買っていたら今いくら?

JTの配当推移と株価|10年前に100株買っていたら今いくら?

「高配当株の代表といえばJT」。投資を始めたころ、そんな話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

シリーズ「もしも10年前にこの株を買っていたら」の20社目です。日本の時価総額が大きい会社を上から順に、「10年前に100株買っていたら、株価と配当でいくらになったか」を実際のデータで計算しています。

今回は、時価総額20位の日本たばこ産業(JT、2914)です。国内外でたばこ事業を展開し、医薬や加工食品の事業も持つ会社です。配当に力を入れる会社として知られています。

結果は2.33倍。前回の三菱重工業(8.36倍)のような派手さはありません。でもこの株は、受け取った配当の大きさがまったく違いました。そして、株価が長い間投資額を下回っていたという、高配当株ならではの10年でもありました。

この記事で分かること:

  • 10年前に100株買っていたら、今いくらになっているか
  • 配当が毎年いくら入ってきたか(年ごとの表)
  • 上場来初の減配と、配当の方針の変更
  • 新NISAでS&P500を積み立てる僕が、この10年を見て考えたこと

1. 計算の前提

まず、計算のルールです。

  • 2016年10月27日の終値で100株を購入
  • 配当は再投資せず、受け取るだけ
  • 税金・手数料は考えない(税引き前)
  • 株式分割は株数に反映(この10年は分割なし)

JTはこの10年、株式分割をしていません。最初に買った100株は、今も100株のままです。データはYahoo Financeから取得し、2026年10月23日時点の終値で計算しました。

10年前の100株は39万8,700円。今回のシリーズでは高めの投資額です。


2. 結果:100株が2.33倍に

結果はこうなりました。

買った日 2016年10月27日
当時の株価 3,987円
投資額(100株) 398,700円
今の株数 100株(分割なし)
今の株価(2026年10月23日) 7,539円
今の評価額 753,900円
株の値上がり率 +89.1%
10年間の配当合計 175,000円
株+配当の合計 928,900円
トータルリターン +133.0%(2.33倍)

39万8,700円が、株と配当を合わせて92万8,900円になりました。注目したいのは配当です。10年間で受け取った配当は17万5,000円。前回の三菱重工業(1万5,850円)の10倍以上です。

日本たばこ産業を10年前に100株買っていた場合の推移

① 配当が毎年いくら入ったか

配当の流れを年ごとに見てみます。

年 1株配当 受け取った配当 年末の評価額 累計配当
2016年※ 66円 6,600円 384,400円 6,600円
2017年 140円 14,000円 363,100円 20,600円
2018年 150円 15,000円 261,650円 35,600円
2019年 154円 15,400円 243,250円 51,000円
2020年 154円 15,400円 210,200円 66,400円
2021年 140円 14,000円 232,250円 80,400円
2022年 188円 18,800円 266,100円 99,200円
2023年 194円 19,400円 364,500円 118,600円
2024年 194円 19,400円 408,000円 138,000円
2025年 234円 23,400円 564,000円 161,400円
2026年※ 136円 13,600円 753,900円 175,000円

※2016年は10月27日からの約2か月、2026年は10月23日までのデータで、どちらも1年分ではありません(2026年は中間配当のみ)。2026年の「年末の評価額」は10月23日時点の値です。表はYahoo Financeのデータを暦年(1〜12月)で集計したものです。

1年分の配当は、2017年の14,000円から2025年の23,400円へ増えました。ただし、2021年は14,000円に減っています。これは1994年の上場以来、初めての減配でした(日本経済新聞)。

② 取得額に対する配当利回りは5.87%

直近の1年分そろっている2025年で見ると、最初の投資額に対する配当利回りは5.87%です。39万8,700円に対して、1年で23,400円の配当が入ってくる計算です。

③ 評価額は長い間、投資額を下回っていた

評価額の動きを見ると、この株の10年は「我慢の時間」がとても長かったことが分かります。

  • 2016年末から2023年末まで、年末の評価額はずっと投資額の398,700円を下回っていました
  • いちばん低かったのは2020年末の210,200円です
  • 2024年末に408,000円と投資額を上回り、2025年末に564,000円、2026年10月23日は753,900円まで上がりました

その間も、配当は毎年入ってきていました。2023年末までの累計配当は118,600円です。株価が下がっている間も、配当が「持ち続ける理由」になっていたと言えそうです。

株価が沈んでいた間も、配当は毎年届いていました。

配当利回りはどうだった?(買ったときと、持ち続けた場合)

「この株を買うかどうか」を考えるには、配当利回りを知ることが欠かせません。買ったときの利回りと、その後の利回りの変化を計算しました。

買ったとき(2016年10月27日)の配当利回りは3.21%です。買う前の1年間に支払われた1株配当128円を、買ったときの株価3,987.0円で割った値です(どちらも分割調整後)。

時点 1株配当 株価 その時点の配当利回り 持ち続けた場合の利回り
買ったとき(2016年10月) 128円 3,987.0円 3.21% —
2017年 140円 3,631.0円 3.86% —
2018年 150円 2,616.5円 5.73% 3.76%
2019年 154円 2,432.5円 6.33% 3.86%
2020年 154円 2,102.0円 7.33% 3.86%
2021年 140円 2,322.5円 6.03% 3.51%
2022年 188円 2,661.0円 7.07% 4.72%
2023年 194円 3,645.0円 5.32% 4.87%
2024年 194円 4,080.0円 4.75% 4.87%
2025年 234円 5,640.0円 4.15% 5.87%
今(2026年10月23日) 266円 7,539.0円 3.53% 6.67%

※1株配当と株価は分割調整後の値です。株価は、買ったときは購入日の株価、各年は年末の株価、今は10月23日の株価です。1株配当は、買ったときと今は直近1年間、各年はその年(1〜12月)の合計です。「その時点の配当利回り」=1株配当÷その時点の株価(その時点で新しく買う人の利回り)。「持ち続けた場合の利回り」=1株配当÷買ったときの株価(2016年に買って持ち続けている人の利回り)。

持ち続けた場合の今の利回りは6.67%です。買ったときの3.21%から、持ち続けて増配を受け取ることで約2.1倍に上がっています。買ったときの利回りが低くても、増配が続けば、持ち続けている自分にとっての利回りは年々上がっていきます。一方で、今新しくこの株を買う人の利回りは3.53%です。

だから僕は、買うかどうかギリギリで悩む株価でも、増配が続く前提なら買うことにしています。そこまで悩んで買えないなら、「将来の増配を考えれば、今の株価は安い」と自分に言い聞かせる。最後は少し感情の判断ですが、それくらいの気持ちで買わないと、いつまでも買えないからです。

僕が高配当株を選ぶときの利回りの目安は3.5〜4%くらいです。日本たばこ産業の買ったときの利回り3.21%は、この目安より低い水準でした。

日本たばこ産業の10年をざっくり振り返る

3. この10年で何が株価と配当を動かしたのか

① 利益が伸び悩み、上場来初の減配へ

JTの営業利益は、2016年12月期の5,933億円から2020年12月期の4,691億円まで、4年続けて減りました(the-shashi 業績推移)。一方で配当は増やし続けたため、2020年度の配当性向は88.1%まで上がっていました(the-shashi 配当推移)。

2021年2月、JTは2021年度の配当予想を前期の154円から130円に引き下げると発表しました。上場来初の減配で、株価は一時10%下がりました(日本経済新聞)。あわせて株主還元の方針を見直し、配当性向75%(±5%程度)を目安にする形に変えています(ザイ・オンライン、JT 株主還元方針・配当)。その後、業績予想の上方修正にあわせて、2021年度の配当は140円に引き上げられました(ザイ・オンライン)。

② カナダの訴訟和解で、2024年度の利益が大きく減る

2025年3月、JTはカナダの子会社などが抱えていた喫煙と健康に関する訴訟の和解について、訴訟損失引当金3,756億円を2024年度の営業費用に一括で計上すると発表しました(JT 適時開示(2025年3月))。2024年度の当期利益は1,792億円まで落ち込みましたが、配当額は変えませんでした(coki、the-shashi 配当推移)。

③ 業績の回復と上場来高値

2025年12月期は、売上収益が3兆4,677億円、営業利益が8,670億円となりました(the-shashi 売上推移、業績推移)。2026年7月30日に発表した中間決算は、売上収益が前年同期比17.7%増、営業利益が29.0%増。通期の予想と配当予想を引き上げ、年間配当は272円(中間136円、期末136円)の予想になりました。翌日の取引時間中には、株価が7,218円と上場来高値を更新しています(LIMO、JT 剰余金の配当(増配)および配当予想の修正に関するお知らせ)。

減配も、巨額の和解も乗り越えて、配当はこの10年でいちばん高い水準へ。


4. 僕の場合:JTの10年を見て考えたこと

JTは、高配当株として有名な会社です。後で書くとおり、僕のルールでは今は見送りですが、株価が下がれば買いたい株なので、これからもチェックしておきたいと思っています。

買うタイミングさえ間違えなければ、失敗しにくい株だと思います。その反面、2021年12月期には、配当を上場来はじめて減らしました(154円→140円)。ずっと増配してきた会社でも、これまでと違う動きをすることがあります。買ったあとに我慢して持ち続けられるかどうかも大事だと感じました。

僕は今、SBI証券の新NISAでS&P500のインデックスファンドを積み立てています。あわせて、NISAの外で日本の高配当株にも投資しています。

今回の結果を見て、考えたことは3つです。

1つ目は、配当は「持ち続ける力」になる、ということです。年末の評価額は、7年以上も投資額を下回っていました。値上がりだけを期待して買った株なら、僕はどこかで手放していたと思います。でもその間も、毎年1万4,000円〜1万9,400円の配当が入ってきていました。僕の投資の考え方でも書いたとおり、僕が高配当株に求めているのは、受け取りながら長く持ち続けられることです。JTの10年は、まさにその形でした。

2つ目は、高配当でも減配はある、ということです。JTは配当性向がとても高い会社です。利益が伸びない時期が続くと、配当を守り切れなくなることがあります。2021年の減配は、その例だと思います。高配当株を持つなら、配当の金額だけでなく、その配当を支える利益も見ておく必要があると感じました。

3つ目は、1社に頼らないことの大切さです。訴訟の和解のような大きな出来事は、外から予想するのは難しいと思います。僕がS&P500を土台にして、高配当株は複数の会社に分けて持っているのは、こうした「1社の事件」で全体が揺れないようにするためです。

僕の買い方ルールで判定すると

最後に、僕が高配当株を選ぶときのルールで、今の時点のJTを判定してみます。

ルール 今の状況 判定
① 売上・利益が10年単位で増えている 売上収益は2016年12月期の2兆1,433億円から2025年12月期の3兆4,677億円へ。営業利益は5,933億円から8,670億円へ、当期利益は4,217億円から5,102億円へ。営業利益は2017〜2020年12月期に減ったが、2022年12月期には6,536億円と2016年を上回った。2024年12月期はカナダ訴訟和解の引当金3,756億円の計上で大きく減益、2025年12月期に回復(the-shashi 売上推移、業績推移、JT 適時開示) ○
② 10年増配(コロナ期以外の据え置き・減配なし) 決算期ごとの年間配当は2016年12月期130円→140円→150円→154円→2020年12月期154円→2021年12月期140円→188円→194円→2024年12月期194円→2025年12月期234円。2021年12月期は上場来初の減配、2024年12月期は据え置き(the-shashi 配当推移、日本経済新聞)。2026年12月期は272円を予想(株予報) ×
③ PBR 3.05倍(2026年10月23日、Yahoo!ファイナンス)。JPXの業種別PBRでは、プライム市場の食料品は1.9倍(2026年9月末、加重平均、KabuGraph(JPXデータ))。業種平均より高い ×
④ 配当利回り3.5〜4% 3.53%(直近1年の配当266円÷株価7,539円)。会社予想の配当272円で見ると3.61%(Yahoo!ファイナンス) ○
補足 利益が増えた年は増配しているか 当期利益が前期より増えたのは2021・2022・2023・2025年12月期。2022・2023・2025年12月期は増配したが、2021年12月期は減配(154円→140円)(the-shashi 配当推移) △
補足 配当性向30〜40% 2025年12月期は81.4%、2023年12月期は71.4%、2022年12月期は75.4%(2024年12月期は和解の影響で192.2%)(the-shashi 配当推移)。会社は配当性向75%(±5%程度)を目安にしている(JT 株主還元方針・配当、LIMO)。利益の大部分を配当に回す方針 ×

僕のルールでは見送りです。今の配当利回りは目安の範囲に入っていますが、2021年の減配と2024年の据え置きがあり、配当性向も目安を大きく超えているためです。PBRも業種平均より高い水準です。

※僕の自己流のルールで判定した、僕自身の判断です。この株の購入や売却を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

このシリーズは「この株を買うべき」という話ではありません。10年という時間で、株価と配当がどう動くのかを記録して、自分の投資の考え方を整理するためのものです。

配当の多さと、配当の続きやすさは、別々に確かめるものです。

JTの10年から考えたこと

5. 今日からできること

  • 気になる高配当株の「配当性向」を調べてみる:利益のうち何%を配当に回しているかを見ると、増配の余地がどれくらいあるかの目安になります
  • 過去10年に減配や据え置きがなかったか確認する:今の利回りだけでなく、苦しい時期に配当をどう扱ったかを見ると、その会社の配当への姿勢が分かります
  • 「株価+配当」で成績を考えてみる:株価だけ見ると含み損でも、受け取った配当を足すと見え方が変わります。高配当株は、両方を合わせて評価する習慣をつけると気持ちが楽になります

6. まとめ

まとめ:もしも10年前にJT株を買っていたら
  • 10年前にJTを100株(398,700円)買っていたら、株+配当で928,900円、2.33倍になっていた
  • 10年の配当合計は175,000円。前回の三菱重工業の10倍以上
  • 2016年末から2023年末まで、年末の評価額は投資額を下回っていた
  • 2021年に上場来初の減配。その後は配当性向75%を目安に、2026年は272円の予想
  • 僕の買い方ルールでの判定は「見送り」。利回りは目安に入るが、減配・据え置きと高い配当性向が基準に合わない

過去の成績は、将来の成績を保証するものではありません。今回の結果は、あくまで「過去10年ではこうだった」という記録です。配当を多く出してきた会社が、この先も同じように配当を出し続けるとは限りません。

次回は、時価総額21位のゆうちょ銀行を取り上げる予定です。

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出典:株価・配当データは Yahoo Finance(2914.T)、データ取得日 2026年10月23日。

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資は自己責任でお願いします。

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